ピッキングの歴史は、鍵の歴史とともに古く、人類が財産を守るために鍵を作り始めた頃から、それを不正に開けようとする試みも存在していました。ここでは、ピッキングと鍵の歴史について、簡単に解説します。鍵の原型は、古代エジプトで発明された「エジプト錠」と呼ばれる木製の錠前だとされています。エジプト錠は、かんぬきを固定するピンを、専用の鍵で押し上げることで解錠する仕組みでした。この頃から、鍵を不正に開ける試みは存在していたと考えられています。中世ヨーロッパでは、金属製の錠前が普及し、鍵の構造も複雑化していきました。しかし、同時に、ピッキングの技術も進化していきました。錠前職人たちは、ピッキングに対抗するため、様々な工夫を凝らしました。例えば、鍵穴の形状を複雑にしたり、鍵穴内部に障害物を設けたりすることで、ピッキング工具の侵入を防ごうとしました。18世紀になると、イギリスで「ブラマー錠」と呼ばれる、非常に複雑な構造の錠前が発明されました。ブラマー錠は、長年にわたり、ピッキング不可能とされていましたが、1851年に開催されたロンドン万国博覧会で、アメリカ人の錠前職人アルフレッド・チャールズ・ホッブズによって、ピッキングされてしまいました。この出来事は、当時の人々に大きな衝撃を与え、錠前の防犯性に対する関心を高めるきっかけとなりました。20世紀に入ると、工業技術の発展とともに、大量生産された安価な錠前が普及しました。しかし、これらの錠前は、ピッキングに弱いものが多く、空き巣被害が社会問題となりました。近年では、ピッキング対策として、ディンプルキーやウェーブキーなど、複雑な形状の鍵穴を持つ鍵が開発され、普及しています。また、ICチップを内蔵した電子錠など、新しい技術を用いた鍵も登場しています。鍵とピッキングの歴史は、人類の知恵と技術の競争の歴史でもあります。今後も、鍵の防犯性は進化し続けるとともに、それを破ろうとする試みも続くでしょう。