住宅の防犯対策を考える上で、最も警戒すべき脅威の一つが「ピッキング」です。特殊な工具を使って鍵穴からシリンダー錠を不正に解錠するこの手口は、巧妙化の一途をたどっています。しかし、鍵の技術もまた、ピッキング手口の進化に合わせて日々進歩しています。今回は、ピッキングに強いシリンダー錠とはどのようなものか、その進化の歴史と具体的な対策について深掘りしていきましょう。かつて主流だった「ディスクシリンダー錠」は、鍵の片側がギザギザしているシンプルな構造でした。このタイプの鍵は、熟練者にかかれば数秒から数十秒でピッキングされてしまうリスクが高く、現在の防犯基準から見ると非常に脆弱と言わざるを得ません。ピッキングの脅威が高まるにつれ、メーカーはより複雑な構造を持つシリンダー錠の開発に着手しました。その結果登場したのが、「ピンシリンダー錠」です。鍵の片側または両側に複数の小さな凹みがあり、これにより内部のピンを異なる深さで押し上げることにより解錠されます。ディスクシリンダーよりもピッキング耐性は向上しましたが、それでも限界がありました。そして、現代の主流となっているのが「ディンプルシリンダー錠」です。鍵の表面にランダムに配置された複数のくぼみ(ディンプル)が特徴で、内部には上下左右、斜めなど様々な方向から複数のピンが配置されています。この複雑な構造により、ピッキング工具で全てのピンを正確な位置に揃えることが極めて困難となり、ピッキング耐性は飛躍的に向上しました。ディンプルシリンダー錠のピッキング解錠にかかる時間は、10分以上とされており、これは侵入者が侵入を諦める目安となる「5分」を大きく上回ります。さらに、ディンプルシリンダー錠はピッキング対策だけでなく、破壊攻撃にも強い構造を持つものがほとんどです。ドリルによる破壊を防ぐための超硬材が埋め込まれていたり、こじ開けに強い設計が施されていたりと、多角的に侵入を防ぐ工夫が凝らされています。また、近年では「スマートシリンダー錠」と呼ばれる、さらに進化したタイプも登場しています。
ピッキングに強い鍵とは?シリンダー錠の進化と対策